外来魚/ブラックバス問題について、佐久間功の個人見解

過去に書いた日記などから寄せ集めました

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一部の方から、オオクチバスの表題「実態の知られていない最凶の悪役」について不快感を示されたが、最強ではなく『最凶』、そして『悪役』という言葉に込められた意味を汲み取っていただきたい。

そればかりではなく、もっと微妙で、しかし猛烈に皮肉な言い回しも多数あるので、この程度で引っ掛かると、この拙著は十分に楽しんでいただけないかも……。(^^;

一応「解決派」と名乗ってはいるものの、はっきりと姿勢について書いたことがないので、長くなるがここに書いてみる。

現在、日本の人口の1%弱のバスアングラーがいて、0.5%弱の駆除派がいるのだが、残りの98.5%=世論はこの駆除派のさらに半分以下の急進派に引きずられているというのが事実だと思う。

ただ、これは危険だ。水辺環境にまつわるいろいろな問題点(漁協&土建屋政治の利権や、ずさんな水環境管理も含む)を無視して、バスがいなくなれば、釣り業界(の一部)がなくなれば平和になるかのような幻想を与えてしまっているからだ。彼らが「そんなことはしていない」といっても、現に多くの一般人がそう思っているのだから仕方がない。また駆除派とはいえ、急進派とは考えの異なる、柔軟な対応が、窓口さえ作れば可能である人も少なくないのだ(それも意外な人が)。

だから、私の仕事はこの98.5%がきちんと両方の言い分を聞く、水辺環境に起こっていることをまっすぐ見ることが出来るようにすることだと思うのだ。
これは残念ながら今の釣り業界には出来ない。業界はあくまで駆除派と対決し、勝つことしか考えていない。時には揚げ足取りにのみ走る、不確かな知識を、非科学的な論理でぶつける人もいる。しかし残念ながら、勝ったとしても世論は振り向いてはくれない(この現状を嘆く先進的バス擁護派の方から、私の著作活動に対しては応援いただいている)。

このような中、拙著を読んでいただいた、一般の方々から「かなり冷静にことの推移を見られるようになった」という声が聞かれる。

また、拙著の影響が出たかどうかは定かではないが、バスに問題を限定せず、むやみなコイやメダカ、ホタルの放流を見直す動きも出てきた。在来の自然を見つめ直す活動も活発になってきた。マスコミも一方的なレッテル貼り報道が減少してきた。うれしいことであるし、これが拙著の影響が多少でもあってくれれば、よりうれしい。

もうひとつ。私の立場は両派の情報の架け橋となることもできる。実際に小規模の水域では、バス、ギルによって特定の魚や昆虫がダメージを受けていることをバスアングラーに知らせることも、バスの歴史、メディアの動きを正しく駆除派に教えてあげることだってできる。これができる人が皆無に近いというのはなぜだ?それだけで問題がゆがんでいることが証明できるではないか。相手の糾弾をすることだけがジャーナリストの仕事ではないのだ。

追記:

拙著のあとがきで「名水の里より天然のイワナとヤマメに思いを……」と書いたのはなぜか。短絡的なバスアングラーからツッコミが入っていたので、さらに長くなるが説明しておこう。

「南アルプスの天然水」の里、山梨県の白州は、実はかなりの崩壊地で、数十年前には大洪水、大崩落にみまわれ、今や三面護岸と堰堤で、川は見る影もない。産卵遡上が不可能なため、一応自然の川に近い本流でさえもヤマメやイワナ、さらにはカワマスとイワナのハイブリッドまでもが放流されている。追い打ちを欠けるように、地元の人もいぶかるあり得ない上流域までアユが放流されているのだ(もちろんオイカワもいる)。
結局、自力繁殖している「野生」に出会う可能性は、オイカワやアブラハヤをのぞけば、なんと公園のように整備された農業用ため池のバスだけなのだ。

これを日本の象徴と言わずしてなんと言おう。そこで「天然の〜」という文につながるのだ。ちなみに本文中に使った堰堤などの写真は、ほとんどこの地域のものである。

釣りをしている人なら、ここまでピンと来て欲しい。いやむしろそこまで読み切れないために「だからバスアングラーはバス以外の魚を知らない、価値を認めていない、環境意識が低い」などといわれてしまうのだ。バスアングラーの視点で「トラウト派だから」などという安易な自己解決は、自分で自分の手足を縛っているようなものだと忠告させていただきたい。

あと、極めて個人的な話になるが、ヤマメやイワナ、アマゴは好きだが、ニジマスやブラウンは「好き度」としてはかなり劣るというか管理釣り場およびそういう状態になっている湖でしか釣る気にはならない。ましてヤマメやイワナが自然繁殖している川には一切放流して欲しくない。

だから「ヤマメ/イワナ派」であるけれども、トラウト派とくくられると、かなりムッとする。

それに、天然ヤマメに会えた渓流が地元の都合で続々と潰されているせいもあり、最近はバスしか釣ってません(取材と称して出かけて、いろいろ情報交換してくるときしか竿を握ってないので)。

それにしてもAmazonなどで「外来〜」「21世紀〜」の書評を書いてくれている人たち、いい加減すぎではないだろうか。ちゃんとググってくれれば、うちのサイトが当たるだろうに。著者として、書くべきことは書いてるぞ(言い訳とも言うが)。 少なくともあなた方の思った疑問には答えていると思う。

特に『21世紀の環境を考える』についてアマゾンで書いてる奴。憶測飛ばし過ぎです(山下のオッさんには書けんぞ)。著者は俺だ〜。ググれ〜(まぁ記名していないので仕方ないことではあるが、Amazonの著者欄に「つり人社出版部」ってあるのも間違いだ。もっとも編集部が勝手に書き換えた、納得行かないところも1、2カ所あるが)。

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